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秋山成勲、ONEデビュー戦での“敗北”に青木真也「汚いことをしてでも勝ちたい。それくらい勝つことに必死だった」



615日に中国・上海で開催されたONE ChampionshipONE: LEGENDARY QUEST」に参戦した秋山成勲の4年ぶりの復帰戦は、3ラウンド判定でマレーシアの新鋭アギラン・タニに3-0で判定負けという結果に終わった。勝負に負けはしたが、43歳での新たな挑戦は、一人の格闘家の生き様を見せつける真っ直ぐなものだった。



キャリア晩年でのアジア屈指のリーグ「ONE」への電撃参戦は、常識で考えると「無謀」という意見の方が多かったかもしれない。実質UFCでのラストマッチから4年、格闘技に関わってきたとはいえ、ブランクからいきなりONEのセミファイナルで、しかも相手は活きのいい23歳のストライカーだ。この対戦に向けて、秋山は妥協なくタイの名門タイガージムの門を叩き肉体を作り込んできた。



試合開始から仕掛けたのは秋山だった。タニのタックルの仕掛けに対して、秋山が「反骨の柔道王」健在を証明する鮮やかな柔道の投げを決める。しかし、そこからはタニの荒削りだが威力のある打撃とタックルのコンビネーション、さらにはバックからのリフトアップに翻弄され、想像していた以上に試合勘の鈍りを感じさせる場面が続く。一気に、相手の打撃に飲まれて終わってもおかしくない状況だった。



そんな状況の中、コーナー際での攻防でタニのヒザによる秋山へのローブロー攻撃により試合が一旦止められる。この出来事により防戦一方の展開からやや試合の流れが変わりはじめた。秋山は5分間のインジャリータイムをたっぷりと使い試合に復帰。次第に感覚を取り戻したのか、スタンディングでのタニの大ぶりな打撃とタックルに対し、下がりながら冷静にくぐり抜け難しい1ラウンドを乗り切った。



2Rに入るとスタンドでのタニの猛攻に対して秋山が冷静に対処していく。相手の攻撃をかわしながら前にプレッシャーをかけ、バックブローやボディへのパンチなどで突破口の糸口を探る。リフトアップで振り回され大ぶりのパンチが降り注ぐタニのアグレッシブさは変わらないが、攻め続けた対戦相手もラウンド後半に入るとやや失速。ロープを背に下がりはじめると秋山の左右のフックやボディが当たりはじめた。



最終3R。ポイントが優勢と読んで消極策に転じたタニに対して、前に出る秋山は後ろ回し蹴り。タニも警戒しながらコンパクトに左右のワンツーを当てて牽制、この慎重さが功を奏しミドルなども的確に当たっていた。秋山にとってフルラウンドの戦いは体力的にも厳しかっただろうが、それでも局面を打開すべくジリジリと前に出て、一発二発とストレートで反撃。しかし、それをタニが若さゆえの手数で上回る。みるみる顔が腫れ上がる秋山は残り30秒で決死の右バックハンドをねじ込んだ。互いにKOに至る決定的な場面こそなかったものの、手数の差などからも推測されるようにジャッジ3人がタニを支持した。



AbemaTVで解説を務めていた青木真也は「彼の必死に戦った気持ちが伝わりました。ちゃんと(体を)作ってきたしノレる。勝つことに必死だった。インターバルを長く取ってでも勝ちたい。ロープの外に出てからでも勝ちたい。汚いことをしてでも勝ちたい」と敗れたものの秋山成勲の総合格闘技にかける本気度や勝ちを欲する気迫を讃えた。



「汚いことをしてでも勝ちたい」と言っても、かつてとは意味合いは大きく違うものだろう。秋山のキャリアを遡ると、日本でのHERO’S時代はふてぶてしさすら感じられた。2006年のDynamite!!での桜庭和志戦での失格騒ぎのイメージが忘れられないという格闘ファンも少なくない。しかしその後のUFCでの勝っても負けてもファイト・オブ・ザ・ナイトを連発した激戦の数々など、世界一の舞台で苦闘するなかで、彼自身の格闘技との関わり方は、より懐の深いものとして醸成されていった。意外と成熟期の海外での秋山のファイトを知らない人も少なくないだろう。



この試合を前に、秋山はUFCを体感した上で次のように語っていた。



「自分が日本を離れてUFCで闘っているとき、UFCは格闘家の誰もが目指したい団体になった。一方の日本はK-1PRIDEDREAMなどがあった時よりも規模が縮小され、正直寂しい気持ちがあった。仮にUFCだけが一人勝ちをしても意味はなく、世界的に、世界中で格闘技が盛り上がらないとスポーツとしてはダメ。各団体、皆が手に手を取って、格闘技を盛り上げようというスタンスに立たなければならない。韓国にもROAD FCという総合格闘技団体はあるが、レベルは高い一方、ファイトマネーがとにかく安い。『選手は何をモチベーションに日々頑張っているのか?』と疑問に思ってしまうほどです。選手ごとに契約状況は異なると思いますが、そういったことを踏まえながら、ONEが彼らの受け皿となるよう役割を担っていきたい」 



自身のファイターとしての勝ちたいという強い気持ちと、日本と韓国の格闘技界の発展を願う気持ち。日本時代が第1章、UFC時代が第2章であるならば、ONEの舞台は総合格闘家・秋山成勲の第3章のはじまりだ。今回の勝負にヘコたれることなく、試合後には力強く次に向けての挑戦を宣言している。



「一生懸命頑張りましたが、負けました。自分が弱いから負けた。ただそれだけの事。もっと強くなりたい! 親父に何でも常に挑戦しろ! の教え、周りに何を言われても俺は挑戦し続ける。秋山成勲最後の挑戦! 格闘技ストーリー始まったばかりです!」

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